Meta、元OpenAI研究者を新AI研究所の主任科学者に任命

2025年07月26日

MetaがOpenAI出身のShengjia Zhao氏をAI超知能研究所の主任科学者に任命
同氏はChatGPTやGPT-4、推論モデルo1の開発に貢献した経験を持つ
Metaは数百億ドル規模の投資でAI人材獲得競争を激化させている

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OpenAI出身の研究者がMetaの新AI研究所を率いる

Metaは7月25日、元OpenAI研究者のShengjia Zhao氏を新設したAI超知能研究所（MSL）の主任科学者に任命したと発表しました[1]。Zhao氏は、ChatGPT、GPT-4、そして革新的な推論モデルo1の開発に深く関与した経験を持つ研究者として知られています[3]。同氏は6月にMetaに入社し、今回正式に主任科学者としての役職が発表されました[5]。

MSLは、Mark Zuckerberg CEO、新任のAI責任者Alexandr Wang氏、そしてZhao氏の3人体制で研究方針を決定していく体制となります[1]。この研究所は、既存のFAIR（Facebook AI Research）とは独立した組織として設立され、AGI（汎用人工知能）の開発に特化した基礎研究を行います[3]。

この人事は、AI業界における人材獲得競争の激化を象徴する出来事です。Zhao氏のような最先端AI開発の中核を担った研究者の移籍は、単なる人材流動を超えた戦略的意味を持ちます。特に、o1モデルで導入された「思考の連鎖」推論技術は、現在業界全体で模倣されている革新的手法であり、その開発者を獲得することは技術的優位性の確保に直結します。Metaが独立した研究組織を設立したのも、既存の研究体制では対応しきれない新たな技術領域への本格参入を意味していると考えられます。

積極的な人材獲得戦略で競合他社から優秀な研究者を引き抜き

Metaは6月以降、OpenAIから十数名の研究者を引き抜くなど、積極的な人材獲得を展開しています[2]。同社はOpenAI、Google DeepMind、Apple、Anthropicといった主要AI企業から優秀な人材を獲得し、競争力のあるリーダーシップチームを構築しています[1]。特に、AppleのAI部門責任者やGoogleのGeminiモデル開発エンジニアなど、各社の中核人材の獲得に成功しています[4]。

この人材獲得には巨額の報酬が提示されており、一部報道によると1億ドル以上のパッケージが提示されたケースもあります[6]。E7レベルのエンジニアの年収は約154万ドルに達するとされ、業界標準を大幅に上回る待遇で人材を確保しています[6]。

この人材獲得戦略は、まさに現代のAI開発における「軍拡競争」の様相を呈しています。優秀な研究者は限られており、彼らの知識と経験は企業の技術的優位性を左右する決定的要因となります。Metaの戦略は、単に人材を獲得するだけでなく、競合他社の開発力を削ぐという二重の効果を狙ったものと言えるでしょう。ただし、高額報酬だけでは長期的な定着は困難で、研究環境や企業文化、プロジェクトの魅力度なども重要な要素となります。実際、報酬面では魅力的でも、プロジェクトの方向性に疑問を持って転職を断る研究者も存在するという報告もあります。

数百億ドル規模の投資でAI基盤インフラを強化

MetaはMSLの設立に合わせて、「数百億ドル」規模のコンピュート基盤への投資を発表しています[1]。この投資は、基礎的なAIモデルの研究開発と、高度なAI機能をサポートするインフラ構築を目的としています[2]。また、同社は143億ドルでScale AIを買収し、CEO のAlexandr Wang氏をAI責任者として迎え入れるなど、戦略的な投資も並行して進めています[4]。

MSLの研究目標は、人間レベルまたはそれを超える能力を持つAIシステムの開発に設定されており[5]、特にMeta の1兆ドル規模の広告エコシステムの自動化への応用も視野に入れています[2]。これにより、同社の主力事業である広告事業の効率化と収益性向上を図る狙いがあります。

この巨額投資は、AI開発における「規模の経済」の重要性を物語っています。現代のAI開発では、優秀な人材と同様に、大規模なコンピュート資源が不可欠な要素となっています。数百億ドルという投資規模は、一般的な企業では到底実現不可能な水準であり、Meta、Google、Microsoft、OpenAIといった巨大テック企業のみが参入可能な領域となっています。これは、AI技術の民主化とは逆行する傾向とも言えますが、一方で技術革新のスピードを加速させる効果も期待できます。特に広告事業への応用は、投資回収の明確な道筋を示しており、研究開発の持続可能性を高める戦略的判断と評価できます。

まとめ

MetaによるShengjia Zhao氏の主任科学者任命は、AI業界における人材獲得競争の新たな局面を示しています。同社は巨額の投資と競争力のある報酬体系により、業界トップクラスの研究者を結集し、AGI開発に本格参入する姿勢を鮮明にしました。MSLの設立により、Meta は既存の研究体制を超えた新たな技術領域への挑戦を開始し、AI技術の実用化と事業化の両面で競合他社との差別化を図ろうとしています。今後、この研究所がどのような成果を生み出すかが、AI業界全体の発展方向を左右する重要な要素となるでしょう。