Cohere企業価値68億ドルに急上昇、NVIDIA・AMD・Salesforceが追加投資

2025年08月15日

Cohereが5億ドル調達で企業価値68億ドルを達成、24%の評価額上昇
NVIDIA・AMD・Salesforceが既存投資家として追加投資を実行
元Meta AI責任者とUber元幹部を重要ポストに招聘し経営体制強化

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5億ドル調達ラウンドで企業価値68億ドルを達成

カナダのAIスタートアップCohereが、5億ドルの資金調達ラウンドを完了し、企業価値68億ドル（約94億カナダドル）を達成しました[1]。この評価額は、1年前の55億ドルから24%の大幅な上昇を示しており、投資家からの需要が供給を上回る「オーバーサブスクライブ」状態での調達となりました[2]。

今回の調達ラウンドは、カナダの投資会社Radical VenturesとInovia Capitalが共同で主導し、すべて株式による一次資本調達として実行されました[3]。この資金調達により、Cohereは年末までに年間収益2億ドルの達成を目指しており、2月時点からほぼ200%の成長を見込んでいます[4]。

Cohereの評価額急上昇は、企業向けAI市場の急速な拡大を象徴的に表しています。OpenAIやAnthropicが消費者向けサービスで注目を集める中、Cohereは企業向けに特化した戦略で差別化を図っています。これは、まさに「B2B特化のAI企業」として独自のポジションを確立していることを意味します。年間収益の200%成長予測は、企業のAI導入が加速している証拠でもあり、今後のエンタープライズAI市場の成長ポテンシャルを示唆しています。

テック大手3社が既存投資家として追加投資を実行

今回の資金調達ラウンドには、既存投資家としてNVIDIA、AMD Ventures、Salesforce Venturesが参加し、Cohereへの投資を拡大しました[5]。これらの企業は「ダブルダウン」（追加投資）を行い、Cohereの成長戦略に対する強い信頼を示しています[6]。

特にNVIDIAの参加は注目に値します。同社はAIチップ市場のリーダーとして、有望なAI企業への戦略的投資を積極的に行っており、Cohereの技術力と市場ポテンシャルを高く評価していることがうかがえます[1]。また、PSP InvestmentsやHealthcare of Ontario Pension Planなどの機関投資家も参加し、投資家層の多様化も実現しています[4]。

NVIDIA、AMD、Salesforceという3つの異なる分野のテック大手が同時に追加投資を行ったことは、Cohereのエコシステム戦略の成功を物語っています。NVIDIAはハードウェア（GPU）、AMDは競合チップメーカー、Salesforceはエンタープライズソフトウェアという、それぞれ異なる立場からCohereの価値を認めているのです。これは、Cohereが単なるAIモデル開発会社ではなく、企業向けAIソリューションの総合プラットフォームとして位置づけられていることを示しています。既存投資家による追加投資は、初期投資の成果に満足していることの証明でもあります。

Meta・Uber出身の重要人材を招聘し経営体制を強化

Cohereは資金調達と並行して、重要な人事異動を発表しました。元Meta AI研究部門責任者のJoelle Pineau氏を最高AI責任者（Chief AI Officer）として招聘し、元Uber代理CFOのFrançois Chadwick氏を最高財務責任者（CFO）に任命しました[2]。

Pineau氏はMetaでAI研究を統括していた経験を持ち、Cohereの技術開発戦略を牽引する役割を担います。一方、Chadwick氏はUberやKPMGでの豊富な財務経験を活かし、急成長するCohereの財務管理と事業拡大を支援します[3]。また、内部昇進としてPhil Blunsom氏が最高技術責任者（CTO）に昇格しています[2]。

Meta AI部門の責任者とUberの元CFOという組み合わせは、Cohereの戦略的意図を明確に示しています。Pineau氏の招聘は、最先端のAI研究開発能力の強化を意味し、Chadwick氏の任命は急速な事業拡大に対応する財務体制の構築を表しています。これは、研究開発型のスタートアップから本格的な事業会社への転換期にあることを物語っています。特に、年間収益200%成長を目指す中で、適切な財務管理と戦略的投資判断が極めて重要になるため、経験豊富なCFOの存在は投資家にとっても安心材料となるでしょう。

エンタープライズ特化戦略で差別化を図る

Cohereは、OpenAIやGoogleなどの競合他社とは異なり、企業向けAIソリューションに特化した戦略を採用しています。同社のCommandシリーズは、特にCommand Aモデルが3月にデビューし、GPT-4oと同等の性能を75%高速で提供すると報告されています[1]。

また、Cohereは最大200ページの文書を処理できる埋め込みモデルや、企業のデータセンター内で動作する「エアギャップ」展開オプションを提供しており、データセキュリティを重視する企業のニーズに対応しています[1]。Royal Bank of Canadaなどの大手企業が、データを社内に保持しながらAI機能を活用するためにCohereのNorthプラットフォームを利用しています[6]。

Cohereのエンタープライズ特化戦略は、AI市場の成熟化における賢明な選択です。消費者向けAI市場では既にOpenAIやGoogleが強固なポジションを築いている中、企業向け市場はまだ発展途上であり、セキュリティやコンプライアンス要件が厳しいという特殊性があります。「エアギャップ展開」というのは、外部ネットワークから完全に遮断された環境でのAI運用を意味し、金融機関や政府機関にとって必須の要件です。RBCのような大手銀行が採用していることは、Cohereの技術が実際のエンタープライズ要件を満たしている証拠であり、今後の企業顧客獲得において大きなアドバンテージとなるでしょう。