朝日・日経がPerplexity AI相手に44億円損害賠償請求、記事無断利用で提訴

2025年08月27日

朝日新聞と日経新聞がPerplexity AIを相手に東京地裁で44億円の損害賠償を求める訴訟を提起
2024年6月以降、記事の無断複製・保存と虚偽情報の配信が問題となっている
AI企業と出版社の著作権を巡る法的紛争が世界的に拡大している

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日本メディア大手が結束してAI企業を提訴

朝日新聞社と日本経済新聞社は、米国のAI検索企業Perplexity AI Inc.を相手取り、東京地方裁判所に著作権侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を共同で提起しました[3]。両社は合計44億円（約3000万ドル）の損害賠償を求めており、各社がそれぞれ22億円の賠償を請求しています[2]。

この訴訟は、2024年6月以降にPerplexity AIが両社の記事を許可なく複製・保存し、さらに虚偽の情報を両社の記事として配信したと主張しています[1]。両社は金銭的損害の賠償に加え、著作権侵害行為の差し止めと既存データの削除も求めています[5]。

この訴訟は単なる著作権問題を超えた、ジャーナリズムの根幹に関わる重要な争点を含んでいます。新聞社にとって記事は単なる情報ではなく、取材・編集・検証を経た知的財産そのものです。AI企業が無断でこれらのコンテンツを利用し、さらに虚偽情報を配信することは、報道機関の信頼性を根底から揺るがす行為と言えるでしょう。特に虚偽情報の配信は、長年築き上げてきたメディアブランドの価値を毀損する深刻な問題です。

技術的な著作権侵害の手法と問題点

訴状によると、Perplexity AIは両社が設定したrobots.txtファイルを無視して記事をスクレイピング（自動収集）していたとされています[5]。robots.txtは、ウェブサイト運営者がクローラーのアクセスを制御するための技術的手段であり、これを無視することは明確な意図的行為と見なされます[3]。

さらに問題となっているのは、Perplexity AIが収集した情報を基に生成した回答に不正確な内容が含まれ、それが両社の記事として配信されていた点です[4]。これにより、両社の報道の信頼性が損なわれる可能性があると主張されています。

robots.txtの無視は、デジタル時代における「立入禁止」の看板を無視するのと同じ行為です。これは技術的に可能だからといって許される行為ではありません。さらに深刻なのは、AI生成の回答に含まれる虚偽情報が、信頼できる報道機関の名前で配信されることです。これは料理に例えると、有名シェフの名前を騙って粗悪な料理を提供するようなもので、ブランド価値の毀損は計り知れません。AI企業は技術の進歩だけでなく、コンテンツ制作者への敬意と適切な対価支払いの仕組みを構築する必要があります。

AI企業と出版社の対立が世界的に拡大

この訴訟は、読売新聞ホールディングス傘下の3社が8月に同様の訴訟を起こした後に続くものです[1]。日本だけでなく、世界各国でAI企業と出版社の間で著作権を巡る法的紛争が増加しており、コンテンツ利用の適切な対価支払いが焦点となっています[5]。

興味深いことに、この訴訟が提起された翌日、Perplexity AIは出版社との収益分配プログラム「Comet Plus」を発表しました[4]。このタイミングは偶然とは考えにくく、法的圧力がAI企業の事業戦略に影響を与えていることを示唆しています。

この状況は、デジタル革命期における典型的な「破壊と創造」のプロセスを表しています。AI技術の急速な発展により、従来のコンテンツ利用の枠組みが追いつかない状況が生まれています。しかし、技術革新が既存の権利を無視して良い理由にはなりません。Perplexity AIの収益分配プログラム発表は、法的圧力への対応という側面もありますが、持続可能なエコシステム構築への第一歩とも解釈できます。今後は「技術vs権利」の対立構造から、「共存共栄」のモデル構築へと発展することが期待されます。

まとめ

朝日新聞と日経新聞によるPerplexity AI提訴は、AI時代における著作権保護の重要な試金石となります。この訴訟の結果は、日本国内だけでなく世界のAI企業とコンテンツ制作者の関係性に大きな影響を与える可能性があります。技術革新と知的財産権の適切なバランスを見つけることが、持続可能なデジタル社会の構築には不可欠です。