北朝鮮金正恩氏、AI制御ドローン量産拡大を指示・軍事技術強化

2025年09月20日

金正恩氏がAI技術開発と無人機量産を軍事近代化の最優先課題に指定
クムソン系列戦術攻撃ドローンの初回公式テストで優秀な戦闘効果を実証
無人航空技術複合体の再編強化計画を承認し、大量生産体制構築を推進

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金正恩氏、AI統合ドローン開発を最優先課題に指定

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は9月18日、平壌の無人航空技術複合体を視察し、人工知能技術の開発と無人機の量産能力拡大を軍事近代化の最優先課題として宣言しました[1]。金氏は戦術無人偵察機と多目的ドローンについて詳細な説明を受け、AI技術の急速な発展と連続生産能力の拡大の必要性を強調しました[2]。この発表は、北朝鮮が従来の核・ミサイル開発に加えて、次世代軍事技術としてのAI統合無人兵器システムに戦略的重点を置いていることを明確に示しています。

金氏は無人航空技術複合体の技術能力強化計画を詳述した文書に署名し、正式に承認しました[1]。この計画には、研究開発体制の再編、生産設備の拡充、そしてAI技術者の育成が含まれているとみられます。特に注目すべきは、金氏が「無人装備の拡大活用が現代戦争の主要資産」であると明言し、従来の人的資源に依存した軍事戦略からの根本的転換を示唆したことです[5]。

この発表は、北朝鮮の軍事戦略における歴史的転換点と言えるでしょう。従来、北朝鮮は核兵器とミサイル技術に国防予算の大部分を投じてきましたが、今回のAI統合ドローン開発への重点移行は、限られた資源をより効率的に活用する戦略的判断を反映しています。AI制御ドローンは、人的損失を最小化しながら高い戦術効果を発揮できるため、人口減少に直面する北朝鮮にとって理想的な軍事技術と言えます。また、この技術は防御だけでなく、非対称戦争における攻撃能力としても極めて有効であり、地域の軍事バランスに大きな影響を与える可能性があります。

クムソン系列戦術ドローンの実戦能力実証

金正恩氏は無人航空技術複合体で、新たに開発されたクムソン系列戦術攻撃ドローンの性能試験を直接監督しました[3]。朝鮮中央通信によると、この試験では米軍車両を模した標的に対する攻撃が実施され、戦略偵察ドローンと戦術攻撃ドローンの両方が優秀な戦闘効果を実証したとされています[3]。これは北朝鮮国営メディアがクムソン系列戦術自爆ドローンの名称を公式に公開した初めての事例であり、実戦配備が近いことを示唆しています。

専門家の分析によると、公開されたドローンの外観はイスラエルのハロップやロシアのランセット-3といった先進的な自爆ドローンに類似しており、北朝鮮の技術的進歩を物語っています[7]。また、別の報道では、偵察用ドローンが米国のRQ-4グローバルホークに類似した設計を採用していることも確認されており[8]、北朝鮮が世界最先端の無人機技術を研究・模倣していることが明らかになっています。

クムソン系列ドローンの公開は、北朝鮮の軍事技術開発能力を過小評価してはならないことを示す重要な事例です。これらのドローンが既存の先進国製システムに匹敵する性能を持つとすれば、製造コストと運用コストの面で従来兵器を大幅に上回る費用対効果を実現できます。例えば、数百万ドルの戦闘機1機に対して、数万ドルのドローン数十機で同等以上の戦術効果を得られる可能性があります。この「量による質の補完」戦略は、経済制裁下で限られた軍事予算を最大化する北朝鮮の現実的選択として理解できます。また、AI制御により人的操縦者への依存度を下げることで、訓練コストの削減と作戦の秘匿性向上も期待できるでしょう。

国際情勢との連動と地域安全保障への影響

今回のAI統合ドローン開発推進は、北朝鮮のロシア・ウクライナ戦争への軍事支援と密接に関連しています[5]。2024年10月以降、北朝鮮は約13,000名の兵力と従来兵器をロシアに派遣し、推定2,000名の戦死者を出していると報告されています。この実戦経験から得られた現代戦争におけるドローンの有効性に関する知見が、今回の技術開発方針に反映されている可能性が高いとみられます。

また、韓米合同軍事演習の実施や地域的緊張の高まりに対する対応策として、無人兵器システムの重要性が再認識されたことも背景にあります[4]。金氏は無人装備の戦略的価値と戦闘効果を強調し、戦闘準備態勢の向上と量産能力拡大を指示しており[6]、これらの技術が近い将来に実戦配備される可能性が高いことを示しています。

北朝鮮のAI統合ドローン開発は、東アジア地域の軍事バランスに根本的な変化をもたらす可能性があります。従来の軍事力比較では、韓国と日本が技術的優位性を保持していましたが、AI制御ドローンの大量配備により、この優位性が相対的に低下する恐れがあります。特に懸念されるのは、これらのドローンが核弾頭の運搬手段として活用される可能性です。小型核弾頭を搭載したAI制御ドローンは、従来のミサイル防衛システムでは迎撃が困難であり、抑止力の概念そのものを変える可能性があります。また、北朝鮮がこの技術を他の反米国家や非国家主体に移転する可能性も考慮する必要があり、国際的な軍備管理体制の見直しが急務となるでしょう。

まとめ

金正恩氏によるAI統合ドローンの量産拡大指示は、北朝鮮の軍事戦略における歴史的転換点を示しています。クムソン系列戦術ドローンの実証試験成功と無人航空技術複合体の強化計画承認により、北朝鮮は次世代軍事技術の実用化段階に入ったと考えられます。この動きは、ロシア・ウクライナ戦争から得られた実戦経験と地域的軍事緊張の高まりを背景としており、東アジアの安全保障環境に大きな影響を与える可能性があります。国際社会は、この新たな軍事技術の拡散防止と適切な対応策の検討を急ぐ必要があるでしょう。