IT大手のAIインフラ投資、2029年に280兆円超へ急拡大―米シティ予測

2025年10月02日

米シティグループがAIインフラ投資を2029年に280兆円と予測
メタやマイクロソフトなど大手IT企業が投資を牽引
一方でAI投資バブルへの懸念も専門家から指摘

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シティグループが示すAI投資の爆発的成長予測

米金融大手シティグループとジェフリーズのアナリストは、AI関連のインフラ投資が2029年までに2.8兆ドル（約280兆円）に達するとの予測を発表しました[1]。この予測は以前の見積もりから大幅に上方修正されており、マイクロソフト、メタ、アップルなどの大手テック企業による積極的な投資が主要な推進力となっています。特に注目すべきは、AI データセンターへの投資が2024年の4300億ドルから2029年には1.1兆ドルまで急拡大する見込みであることです[4]。

この投資拡大の背景には、AI技術の実用化が急速に進んでいることがあります。メタは2025年第2四半期に前年同期比22%増の475.2億ドルの売上を記録し、AI駆動の広告ターゲティングシステムが大幅な収益向上に貢献しました[1]。また、エヌビディアが説明するところによると、1ギガワットの処理能力を開発するには約500億ドルの設備投資が必要とされており、これらの数字がいかに巨額な投資規模であるかを物語っています[2]。

この280兆円という数字は、日本の年間GDP（約540兆円）の半分以上に相当する規模です。これは単なる技術投資ではなく、デジタル経済の基盤そのものを再構築する歴史的な転換点と言えるでしょう。例えば、従来のインターネットインフラ構築が20年以上かけて段階的に行われたのに対し、AI インフラは僅か数年で同等以上の投資が集中的に行われています。これは産業革命時の鉄道建設ラッシュに匹敵する、まさに「AIインフラのゴールドラッシュ」と呼ぶべき現象です。

ハイパースケーラーが牽引する投資競争の実態

アマゾン、マイクロソフト、アルファベット、メタの4大ハイパースケーラーは、2025年に合計3000億ドル以上の設備投資を予定しており、その内訳はアマゾンが1000億ドル、マイクロソフトが800億ドルとなっています[3]。シティグループのアナリストは、これらのハイパースケーラーが2026年にはインフラと設備に4900億ドルを投じると予測しています。

特に注目すべき大型契約として、OpenAIとオラクルの間で締結された3000億ドル規模の契約や、CoreWeaveとOpenAIの224億ドル契約などがあります[3]。また、OpenAIの1000億ドル投資は従来の製品出荷ベースではなく、処理能力のマイルストーン達成を基準とした新しい投資構造を採用しており、AI時代の投資手法の変化を示しています[2]。

これらの投資規模を理解するために、身近な例で考えてみましょう。マイクロソフトの年間800億ドルの投資は、東京スカイツリー（建設費約650億円）を毎日1本以上建設し続けるのと同じペースです。しかも、これは物理的な建造物ではなく、目に見えないデータ処理能力への投資です。従来のIT投資が「効率化」を目的としていたのに対し、現在のAI投資は「新しい価値創造」そのものを目指しており、その結果として投資規模も桁違いになっています。企業にとってAIインフラは、もはや「あれば便利」な存在ではなく、「なければ競争から脱落する」必須の戦略資産となっているのです。

投資ブームの持続性に対する専門家の警鐘

一方で、この急激な投資拡大に対する懸念の声も高まっています。モルガン・スタンレーのグローバル投資委員会は、2022年10月から続くAI設備投資ブームが「7回の裏」に近づいている可能性があると警告しています[5]。主要なAIクラウドプロバイダーのフリーキャッシュフロー成長率が低下しており、ハイパースケーラーの主要収益セグメントに減速の兆候が見られることが懸念材料として挙げられています。

それでも、AIバブル懸念にもかかわらず、インフラ投資のトレンドは堅調に推移すると予測されています[1]。メモリ大手のマイクロンテクノロジーは2025年度に売上高49%増、純利益998%増という記録的な業績を達成し、AI システムに不可欠なメモリ・ストレージソリューションの需要急増を実証しています[4]。

この状況は、まさに「成長と過熱の境界線」を歩んでいると言えるでしょう。歴史を振り返ると、インターネットバブル（2000年）や住宅バブル（2008年）など、革新的技術への過度な投資が経済危機を招いた例は数多くあります。しかし、AIの場合は既に実用的な成果が出始めており、単なる投機的投資とは性質が異なります。例えば、メタの広告収益向上やマイクロンの業績急伸は、AI投資が実際に収益を生み出している証拠です。重要なのは、この投資ブームが「期待先行」から「成果実証」の段階に移行しているかどうかを見極めることです。280兆円という数字は確かに巨額ですが、それが生み出す経済価値がそれを上回れば、健全な投資と言えるでしょう。

まとめ

シティグループの予測する2029年までの280兆円というAIインフラ投資は、デジタル経済の新たな基盤構築を象徴する歴史的な投資規模です。メタやマイクロソフトなどの大手IT企業が牽引するこの投資ブームは、既に具体的な収益向上として成果を示し始めています。一方で、投資の持続性や過熱懸念も指摘されており、今後の市場動向を慎重に見守る必要があります。AI技術の実用化が進む中、この巨額投資が真の価値創造につながるかどうかが、今後数年間の重要な焦点となるでしょう。