a16z初公開、AIスタートアップの資金配分実態調査

2025年10月03日

a16zがMercuryと共同でAIスタートアップの支出パターンを初分析
OpenAIとAnthropicが上位を占め、水平型アプリが60%を占有
完全自律型よりも人間拡張型「コパイロット」ツールに集中投資

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20万社の取引データから見えたAI投資の実態

Andreessen Horowitz（a16z）は、決済プラットフォームMercuryとの提携により、AIアプリケーション支出レポートを初めて公開しました[1]。この調査は2025年6月から8月の3か月間にわたり、20万社以上の顧客の取引データを分析し、スタートアップが実際に資金を投じているAIネイティブ企業トップ50を特定しました。従来のウェブトラフィックベースのランキングとは異なり、実際の支出データに基づく初の包括的な調査として注目されています。

調査結果によると、水平型アプリケーションが全体の60%を占め、垂直型企業の40%を大きく上回りました[2]。OpenAIが首位を獲得し、Anthropicが2位に続く結果となり、大手AI企業の市場支配力が改めて確認されました。特筆すべきは、コーディングツールのReplitが3位にランクインし、開発者向けAIツールの強い需要を示していることです。

この調査の革新性は、「実際の支出」という客観的指標を用いた点にあります。従来のランキングは往々にしてウェブトラフィックや話題性に左右されがちでしたが、企業が本当に価値を感じて投資している製品を明確に示しています。これは投資家にとって、市場の真の需要を理解する上で極めて貴重なデータと言えるでしょう。水平型アプリケーションの優勢は、AIツールがまだ特定業界に特化するよりも、汎用性を重視する段階にあることを示唆しています。

「コパイロット」型ツールが主流、完全自動化への移行は時期尚早

調査で明らかになった重要な傾向として、スタートアップは完全に自律的なエージェント型ワークフローよりも、人間の生産性を向上させる「コパイロット」型ツールに大きく投資していることが判明しました[2]。これは、企業がまだ完全自動化されたAIワークフローを導入する準備が整っていないことを示しています。

特にコーディング分野では、ReplitがNo.3、CursorがNo.6にランクインするなど、開発者向けAIツールが強い存在感を示しました[2]。Replitは従来のプロフェッショナル開発者から非技術系知識労働者へのピボットにより、年間1億5000万ドル以上の収益を達成し、企業顧客向けに1席あたり100ドルの価格設定で粗利益率の黒字化を実現しています[5]。

「コパイロット」型ツールの優勢は、現在のAI導入における現実的なアプローチを反映しています。完全自動化は理想的に聞こえますが、実際のビジネス環境では人間の判断と監督が不可欠な場面が多く存在します。これは自動車業界の自動運転技術の段階的導入と似ており、レベル2（部分自動化）からレベル5（完全自動化）への移行には時間がかかるのと同様です。企業は段階的にAIを導入し、人間とAIの協働体制を構築することで、リスクを最小化しながら生産性向上を実現しようとしているのです。

AIネイティブ企業の台頭と市場の急速な変化

調査では、真にAIネイティブな企業がスタートアップレベルで出現していることが明らかになりました[1]。これらの企業は従来のソフトウェア機能を単純に拡張するのではなく、次世代のソフトウェア機能を中心に構築されています。市場では新しいアプリが急速に台頭し、同様に急速に衰退する現象も観察されており、AI市場の流動性の高さを示しています。

興味深いことに、各カテゴリーで1つまたは2つの勝者に収束する傾向はまだ見られず、企業は様々なタスクに対して多様なAI製品を採用し続けています[2]。この現象は、AI技術がまだ成熟段階に達しておらず、企業が最適なソリューションを模索している段階であることを示唆しています。

AIネイティブ企業の台頭は、技術革新の新たな波を表しています。これは1990年代のインターネット企業や2000年代のモバイルアプリ企業の出現と類似しており、既存の枠組みを超えた全く新しいビジネスモデルの創出を意味します。市場の流動性の高さは一見不安定に見えますが、実際には健全な競争環境の証拠でもあります。各企業が独自の価値提案を模索し、ユーザーが真に価値を感じるソリューションを見つけ出すプロセスが進行中なのです。最終的には、この競争を通じて最も実用的で効果的なAIツールが市場に残ることになるでしょう。

まとめ

a16zの初のAI支出調査は、AIスタートアップエコシステムの実態を客観的データで明らかにした画期的な取り組みです。OpenAIとAnthropicの市場支配、水平型アプリケーションの優勢、そして「コパイロット」型ツールへの集中投資という三つの主要トレンドが浮き彫りになりました。この調査結果は、投資家や起業家にとってAI市場の真の需要を理解し、戦略的意思決定を行う上で貴重な指針となるでしょう。今後もこのような実データに基づく市場分析が、AI業界の健全な発展に寄与することが期待されます。