Anysphere、企業価値180億ドル超でVC資金調達を検討中

2025年06月18日

AIコーディングツール「Cursor」のAnysphere、企業価値180-200億ドルで資金調達検討
年間経常収益5億ドル達成、エンタープライズ顧客がNvidia、Uber、Adobeなど
月額200ドルのUltraプランで収益多様化、独自AIモデル開発も進行中

史上最速の成長を遂げるAIスタートアップ

AIコーディングアシスタント「Cursor」を開発するAnysphereが、投資家から180億ドルから200億ドルの企業価値評価での資金調達提案を受けていることが明らかになりました[1]。同社は年間経常収益（ARR）5億ドルを達成し、Nvidia、Uber、Adobeなどの大手企業顧客を獲得しています。この急成長により、シリコンバレーの投資家からは「史上最速の成長を遂げるスタートアップ」との評価を受けています[5]。

Anysphereの企業価値は2024年12月の25億ドルから2025年5月には99億ドルまで急上昇しており[4]、わずか半年で約4倍の成長を記録しています。この驚異的な成長率は、企業向けAIツール市場の爆発的な拡大と、同社の技術力の高さを物語っています。

この評価額の急上昇は、まさにAI革命の象徴的な出来事です。従来のソフトウェア開発では、プログラマーが一行一行コードを書いていましたが、Cursorのようなツールは「AIがコードを提案し、人間が確認・修正する」という新しいワークフローを実現しています。これは、まるで熟練の職人が見習いに技術を教えるように、AIが開発者の生産性を飛躍的に向上させているのです。180億ドルという評価は、この技術革新が単なる効率化ツールではなく、ソフトウェア開発の根本的な変革をもたらす可能性を投資家が認識していることを示しています。

エンタープライズ市場での圧倒的な存在感

Anysphereの成功の鍵は、エンタープライズ市場での強固な地位確立にあります。同社の収益の60%は企業顧客から生み出されており[4]、これは個人開発者向けツールから企業向けソリューションへの戦略的転換が功を奏していることを示しています。特に、OpenAI、Anthropic、Google DeepMindとの複数年にわたるパートナーシップ契約により、安定したAIモデルの供給体制を確保しています[2]。

さらに注目すべきは、同社が「Tab」モデルという独自のAIモデルを開発していることです[1]。このモデルは複数ファイルにわたるコード提案を可能にし、従来のAIコーディングツールでは困難だった大規模プロジェクトでの活用を実現しています。この技術革新により、同社は外部のAIプロバイダーへの依存度を下げながら、より高度な機能を提供できるようになっています。

エンタープライズ市場での成功は、AnysphereがB2C（個人向け）からB2B（企業向け）への「ピボット」を成功させたことを意味します。これは、スマートフォンアプリが個人利用から企業利用へと拡大していった過程に似ています。企業顧客は個人ユーザーよりも高い料金を支払う傾向があり、長期契約を結ぶことが多いため、収益の安定性と予測可能性が大幅に向上します。独自AIモデルの開発は、まるで自社で発電所を建設するようなもので、外部への依存を減らしながらコスト削減と差別化を同時に実現する戦略的な動きです。

月額200ドルのプレミアムプランで収益多様化

Anysphereは最近、月額200ドルの「Ultra」サブスクリプションプランを導入しました[2]。このプランは、従来のProプランと比較して20倍のAIモデル使用量を提供し、大規模な開発チームや高頻度でAIを活用する企業向けに設計されています。4月以降だけで2億ドルのARR増加を記録しており、この新プランが収益成長の重要な推進力となっています。

この価格設定戦略は、同社が単なるツール提供者から、企業の開発プロセス全体を支援するプラットフォームへと進化していることを示しています。月額200ドルという価格は、一人の開発者の時間給を考えれば、わずか数時間の生産性向上で元が取れる計算になります。

この価格戦略は「価値ベース価格設定」の典型例です。従来のソフトウェアライセンスでは「機能の数」で価格が決まることが多かったのですが、Anysphereは「顧客が得られる価値」に基づいて価格を設定しています。これは、高級レストランが食材費ではなく「体験の価値」で価格を決めるのと同じ考え方です。月額200ドルは一見高額に見えますが、優秀な開発者の時給が100ドルを超える現在の市場では、わずか2時間の生産性向上で投資回収できる計算になります。この価格設定により、同社は高収益体質を確立し、さらなる技術開発への投資原資を確保しているのです。

まとめ

Anysphereの180億ドル超の企業価値評価は、AI技術がソフトウェア開発業界に与える革命的な影響を象徴しています。年間経常収益5億ドルの達成、大手企業顧客の獲得、独自AIモデルの開発、そして戦略的な価格設定により、同社は持続可能な成長基盤を構築しています。今後の資金調達の行方は、AI業界全体の投資トレンドを占う重要な指標となるでしょう。