Atlassian、610億円でAI対応ブラウザ開発のBrowser Company買収

2025年09月05日

Atlassianが610億円でBrowser Companyを全額現金で買収
AI搭載ブラウザ「Dia」の開発を加速し企業向け市場を狙う
Googleのブラウザ独占に対抗する戦略的な動きと分析

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610億円の大型買収でAIブラウザ市場に参入

Atlassianは2025年9月4日、AI対応ブラウザの開発を手がけるThe Browser Companyを6億1000万ドル（約610億円）で買収すると発表しました[1]。この全額現金による取引は、Atlassianの2026年度第2四半期に完了予定で、Browser Companyの前回資金調達時の評価額5億5000万ドルを上回る価格での買収となります[2]。

Browser Companyは、従来のウェブブラウジングではなく、ナレッジワーカー向けに特化したAI搭載ブラウザ「Dia」の開発に注力しています。同社CEOのマイク・キャノン・ブルックス氏は、「一般的なウェブ閲覧ではなく、仕事用アプリケーションに特化したブラウザを構築する」というビジョンを説明しています[3]。

この買収は、単なる技術取得を超えた戦略的な意味を持ちます。現在のブラウザ市場はGoogleのChromeが圧倒的なシェアを占めていますが、AI時代の到来により、従来の「ウェブページを表示する」という概念から「AIがユーザーと情報の間に立って最適化された体験を提供する」という新しいパラダイムへの転換が起きています。Atlassianのような企業向けソフトウェアの巨人が、この新しい戦場に参入することで、ビジネス用途に特化したブラウザ体験の創造が期待できます。

独立運営を維持しながらDiaの開発を加速

買収後もBrowser Companyは独立した運営を継続し、既存のArcブラウザとArc Searchの提供も続けます[4]。同社CEOのジョシュ・ミラー氏とCTOのハーシュ・アグラワル氏は、AIブラウザ市場での競争に勝利するためには配信規模とスピードが必要であり、Atlassianとの提携がその実現を可能にすると説明しています。

Diaは従来のブラウザとは異なり、ユーザーとウェブコンテンツの間にAI抽象化レイヤーを追加することで、より直感的で効率的な作業環境を提供します[2]。Atlassianの企業向けSaaSエコシステムとの統合により、セキュリティ、コンプライアンス、管理機能の強化も図られる予定です[3]。

この独立運営の維持は非常に重要な判断です。スタートアップの革新性を保ちながら、大企業のリソースを活用するという、いわば「良いとこ取り」の戦略といえるでしょう。Browser Companyが培ってきた創造性やアジリティを損なうことなく、Atlassianの企業顧客基盤や技術インフラを活用できれば、Diaの市場投入スピードは大幅に向上するはずです。特に、企業向けソフトウェアで培ったセキュリティやコンプライアンスのノウハウは、AIブラウザの企業導入において決定的な差別化要因となるでしょう。

Google支配に挑戦するクロスプラットフォーム戦略

この買収は、GoogleのChromeOSに対抗するクロスプラットフォームブラウザオペレーティングシステムの構築を目指す戦略的な動きと分析されています[2]。興味深いことに、この発表は米国裁判所がGoogleにChromeの売却を求めない判決を下した直後のタイミングで行われました。

Atlassianとの統合により、Diaは複数のプラットフォームでより迅速に展開され、企業のナレッジワーカー向けに最適化されたブラウザ体験を提供することが期待されています。これは従来のウェブブラウジングパラダイムを置き換える、AI駆動型のブラウザ体験の実現を意味します[2]。

この戦略は、まさに「敵の本丸を攻める」アプローチです。Googleがウェブ検索からブラウザ、そしてクラウドサービスまでを垂直統合して築いた帝国に対し、Atlassianは企業向けソフトウェアの専門性を武器に挑戦状を叩きつけたといえます。特に注目すべきは、単なるブラウザではなく「ブラウザOS」という概念です。これは、アプリケーションがすべてウェブベースになった現代において、ブラウザがOSの役割を果たすという発想の転換を示しています。AIが情報の整理や提示を最適化することで、ユーザーは複数のタブやアプリケーションを行き来する必要がなくなり、真の意味での統合作業環境が実現される可能性があります。