Broadcom、AI売上63%急増で決算予想上回る・半導体業界の勢力図変化

2025年09月05日

BroadcomのAI売上が前年同期比63%急増し52億ドルに達成
第4の大手顧客から100億ドルのカスタムAIチップ受注を獲得
半導体業界で2025年約80%のリターンを記録し競合他社を大幅に上回る

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AI需要急拡大でBroadcomが決算予想を大幅上回る

Broadcomは第3四半期決算で売上高159億6000万ドル（前年同期比22%増）、1株当たり利益1.69ドルを記録し、ウォール街の予想158億3000万ドルを上回りました[1]。特にAI関連売上は前年同期比63%急増の52億ドルに達し、事前予想の51億ドルを超える好調な結果となりました。同社のホック・タンCEOは第4の大手顧客から100億ドルのカスタムAIチップ（XPU）受注を獲得したと発表し、2026年から出荷開始予定としています。

半導体ソリューション部門は57%成長の91億7000万ドル、インフラソリューション部門は43%増の67億9000万ドルを記録しました[1]。純利益は41億4000万ドルに達し、前年同期の18億8000万ドルの損失から大幅に改善しています。第4四半期の売上高ガイダンスは174億ドルとし、市場予想の170億ドルを上回る見通しを示しました。

Broadcomの急成長は、AI革命における「ピック・アンド・シャベル」戦略の典型例です。ゴールドラッシュで最も利益を得たのは金を掘る人ではなく、ツールを売る人だったように、Broadcomは生成AI企業に不可欠なカスタムチップを提供することで確実な収益を確保しています。100億ドルという巨額受注は、大手テック企業がAIインフラに本格投資していることを示しており、この分野での競争優位性を築いたBroadcomの戦略的ポジショニングの成功を物語っています。

AI売上11四半期連続成長で業界トップクラスの地位確立

BroadcomのAI売上は11四半期連続で成長を続けており、第4四半期には62億ドルに達する見込みです[2]。アナリストは2026年度のAI売上が300億ドルを超える可能性があると予測しており、同社の成長軌道が持続可能であることを示しています。この継続的な成長は、大手クラウドプロバイダーやAI企業との長期契約に基づいており、安定した収益基盤を構築しています。

しかし、決算発表後の株価反応は比較的控えめで、時間外取引で1%未満の上昇にとどまりました[2]。これは投資家の期待値が既に非常に高く設定されていたことを反映しており、優秀な業績でも株価への影響が限定的となる状況を示しています。現在のPER110.31という高いバリュエーションは、将来のAI成長に対する市場の強い期待を表しています。

11四半期連続成長という記録は、単なる一時的なブームではなく構造的な変化を示しています。これは、企業がAIを「実験」から「本格運用」へと移行している証拠です。従来のCPUやGPUだけでは処理しきれない複雑なAIワークロードに対応するため、カスタム設計されたASIC（特定用途向け集積回路）の需要が急増しています。Broadcomはこの技術的転換点を早期に察知し、設計から製造まで一貫したソリューションを提供することで、競合他社が追随困難な優位性を築いています。

半導体業界の勢力図変化でBroadcomが突出した成果

2025年のBroadcomの株価リターンは約80%に達し、競合他社を大幅に上回る成果を記録しています[3]。同期間でCiscoは10%、Intelは5%、Qualcommはほぼ横ばいの成長にとどまっており、AI特化戦略の有効性が明確に現れています。同社は粗利益率78.2%、純利益率51.9%という高い収益性を維持しており、効率的な事業運営を実現しています。

従来の半導体業界では、Intel、Qualcomm、Ciscoなどが主要プレイヤーとして君臨していましたが、AI時代の到来により競争環境が劇的に変化しています[3]。Broadcomは通信インフラとカスタムチップ設計の両方に強みを持つことで、新たな市場リーダーとしての地位を確立しつつあります。Marvellなどの新興企業も競争に参入していますが、Broadcomの技術力と顧客基盤は当面優位性を保つと予想されます。

半導体業界の勢力図変化は、技術革新の波が既存の序列を一掃する典型例です。かつて「インテル・インサイド」で知られたIntelが苦戦する一方、Broadcomが躍進している現象は、単なる企業間競争を超えた産業構造の転換を示しています。これは、汎用プロセッサーの時代から専用チップの時代への移行を意味します。自動車産業でガソリンエンジンから電気モーターへの転換が起きたように、半導体業界でもAI専用チップが新たな主役となりつつあります。Broadcomの成功は、この変化を早期に読み取り、適応した企業が市場を制することを証明しています。

まとめ

BroadcomのAI売上63%急増と決算予想上回りは、同社が半導体業界の新たなリーダーとして確固たる地位を築いていることを示しています。100億ドルの大型受注獲得と11四半期連続成長は、AI需要の構造的拡大と同社の戦略的優位性を裏付けています。従来の半導体大手が苦戦する中、Broadcomの突出した成果は業界の勢力図が根本的に変化していることを物語っており、今後のAI市場における同社の重要性がさらに高まることが予想されます。