C3 AI、売上19％減でCEO交代・新体制で再建へ

2025年09月04日

C3 AIの第1四半期売上が前年同期比19.4％減の7030万ドルに落ち込み
創業者シーベル氏が健康上の理由でCEO退任、エヒキアン氏が新CEO就任
株価は年初来52％下落、2026年度業績予想を撤回し再建に注力

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深刻な業績悪化でCEO交代を決断

エンタープライズAI企業のC3 AIが2025年9月3日、創業者のトーマス・シーベル氏に代わってスティーブン・エヒキアン氏を新CEOに任命すると発表しました[3]。この人事は、第1四半期の売上が前年同期の8720万ドルから7030万ドルへと19.4％減少した深刻な業績悪化を受けたものです[1]。

シーベル氏は自身の健康問題により通常の営業活動への参加が困難になったことを明かし、第1四半期の業績を「完全に受け入れがたい」と厳しく評価しました[3]。同氏は2025年初頭に視力に影響する自己免疫疾患と診断されており、これが営業成績の悪化に影響したとされています[4]。

株式市場の反応は厳しく、発表後の時間外取引で株価は11％下落し、年初来では52％の大幅下落となっています[3]。会社は2026年度の業績予想も撤回し、経営陣の交代と営業組織の再編に集中する方針を示しました。

C3 AIの業績悪化は、AI業界全体の成長期待とは対照的な結果となっています。創業者CEOの健康問題は予期せぬ要因でしたが、営業体制の脆弱性が露呈した形です。特に企業向けAI市場では、顧客との長期的な関係構築が重要であり、トップセールスマンでもあったシーベル氏の離脱は大きな痛手となりました。新CEOには、技術力だけでなく営業組織の立て直しという困難な課題が待ち受けています。

政府系出身の新CEO、連邦市場開拓に期待

新CEOに就任するエヒキアン氏は、米国総務庁（GSA）の代理長官を務めていた政府系出身の人材です[4]。同氏はトランプ政権下で調達制度改革の立案者として活動し、過去にはSalesforceに買収された2つのAI企業を創業した実績を持ちます[2]。

C3 AIは連邦政府市場を重要な成長分野と位置づけており、空軍、海兵隊、海軍、情報機関との契約を拡大してきました[4]。特に空軍との4億5000万ドルのPANDAシステム契約は、同社の連邦市場での地位を示す重要な案件となっています[1]。

エヒキアン氏の政府調達に関する深い知見は、C3 AIの連邦市場での競争力強化に直結すると期待されています。同社は現在、HII、Groundswell、SMXといった政府系パートナーとの協業も進めており、新CEOの下でこれらの関係をさらに発展させる計画です[4]。

政府系出身のCEO起用は、C3 AIの戦略転換を象徴する人事と言えるでしょう。民間企業市場での苦戦を受け、より安定した収益が見込める連邦政府市場への注力は理にかなった判断です。エヒキアン氏の調達制度への精通は、複雑な政府契約の獲得において大きなアドバンテージとなります。ただし、政府市場は契約サイクルが長く、短期的な業績回復には時間がかかる可能性があります。

Microsoft連携とAI技術革新で反転攻勢

業績低迷の一方で、C3 AIは技術面での革新を続けており、特にMicrosoftとの戦略的パートナーシップが成果を上げています[1]。2025年第2四半期にはこの連携により29％の売上増加を実現しており、クラウドプラットフォームとの統合が顧客獲得の鍵となっています。

同社は「エージェンティックAI」と呼ばれる次世代AI技術の開発にも注力しており、従来の予測分析から自律的な意思決定支援へと製品ポートフォリオを拡張しています[1]。この技術革新により、製造業、エネルギー、金融サービスなどの分野での新たな用途開拓を目指しています。

財務面では、2億8900万ドルの純損失を計上したものの、7億4270万ドルの現金を保有しており、当面の事業継続に必要な資金は確保されています[1]。この潤沢な資金を活用し、新経営陣は研究開発投資と営業体制の強化を並行して進める方針です。

C3 AIの技術力は依然として業界トップクラスであり、Microsoft連携の成功はその証左と言えます。エージェンティックAIは、単なるデータ分析から実際のビジネス判断支援へとAIの役割を拡張する重要な技術です。これは人間の意思決定を補完するAIアシスタントのような存在で、企業の業務効率化に革命をもたらす可能性があります。豊富な現金保有は新経営陣にとって大きな武器となり、短期的な業績圧力に屈することなく、中長期的な戦略実行に集中できる環境を提供しています。

まとめ

C3 AIの経営陣交代は、AI企業における創業者依存からの脱却と、より持続可能なビジネスモデル構築への転換点となります。新CEOエヒキアン氏の政府系バックグラウンドと技術的専門性は、連邦市場での成長と民間市場での競争力回復の両面で期待されています。短期的な業績回復には時間を要するものの、Microsoft連携の成功とエージェンティックAI技術の進歩は、同社の長期的な競争優位性を支える要素となるでしょう。