CoreWeave、90億ドルでCore Scientific買収しAI基盤統合を加速

2025年07月08日

CoreWeaveが90億ドルでCore Scientificを買収し、1.3GWの電力容量を確保
100億ドルのリース契約を解消し、年間5億ドルのコスト削減を実現
暗号通貨マイニング施設をAI・HPC向けデータセンターに転換

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90億ドル規模の戦略的買収で垂直統合を実現

AI特化型クラウドプロバイダーのCoreWeaveは、暗号通貨マイニング大手Core Scientificを90億ドルの全株式交換で買収すると発表しました[1]。この取引により、CoreWeaveは全米で1.3ギガワットの電力容量を持つデータセンターを直接所有することになり、さらに1ギガワット以上の拡張可能な容量も確保します[2]。

買収条件では、Core Scientific株主は保有株1株につき0.1235株のCoreWeave株を受け取り、これは6月25日の株価に対して66%のプレミアムを付けた1株20.40ドルの評価額となります[3]。取引完了後、Core Scientific株主は統合後企業の10%未満の持分を保有することになります。

この買収により、CoreWeaveは従来のリース契約から自社所有のインフラストラクチャーへと移行し、12年間で100億ドルのリース費用を削減できると見込んでいます[4]。2027年までに年間5億ドルのコスト削減効果を実現する計画です。

この買収は、AI業界における「土地の確保」競争の典型例と言えるでしょう。CoreWeaveの戦略は、賃貸アパートから持ち家への移行に例えることができます。毎月の家賃を払い続ける代わりに、一度に大きな投資をして不動産を所有することで、長期的には大幅なコスト削減と運営の自由度向上を実現します。特にAI処理に必要な大量の電力と冷却システムを考えると、インフラの直接制御は競争優位性の源泉となります。

暗号通貨からAIへの華麗なる転身

Core Scientificは元々ビットコインマイニング事業で知られていましたが、近年はAI・HPC（高性能コンピューティング）向けのデータセンター事業に軸足を移していました[5]。同社の施設は既にCoreWeaveのGPUクラスターをホストしており、暗号通貨マイニング用の電力インフラをAI処理に最適化された環境に転換してきました[6]。

この転換は業界全体のトレンドを反映しています。暗号通貨マイニングで培われた大規模な電力管理と冷却技術は、AI処理に必要な高密度コンピューティング環境と多くの共通点があります[7]。Core Scientificは977ビットコインを保有しており、これも買収資産に含まれます。

CoreWeaveのマイケル・イントレーター最高経営責任者は、この買収について「運営効率の向上と株主価値の最大化を実現する戦略的な動き」と述べています[8]。一方、Core Scientificのアダム・サリバンCEOは「運営シナジーの創出」に期待を示しています。

この業界転換は、デジタル時代における「金鉱から石油へ」の移行と捉えることができます。暗号通貨マイニングが「デジタル金鉱」だとすれば、AI処理は「デジタル石油精製」です。どちらも大量のエネルギーを消費しますが、AI処理の方がより実用的で持続可能なビジネスモデルを提供します。Core Scientificの施設は、既に必要な電力インフラと冷却システムを備えているため、AI用途への転換が比較的容易です。これは、既存の製油所を新しい燃料生産に転用するようなものです。

AI基盤競争における戦略的優位性の確立

この買収は、CoreWeaveがOpenAIのOracle社との拡大パートナーシップなど、AI業界で進む大規模インフラ投資競争の文脈で理解する必要があります[9]。パブリッククラウドプロバイダーとの競争において、専用施設の所有は重要な差別化要因となります。

CoreWeaveは、リース契約に依存するモデルから脱却することで、電力会社との直接交渉や施設のカスタマイズが可能になります[10]。これにより、AI処理に最適化された環境を構築し、顧客により効率的なサービスを提供できるようになります。

取引は2025年末までに完了予定で、規制当局の承認を待っている状況です。市場は当初この発表に慎重な反応を示し、Core Scientific株は取引前に14.7%下落しました。しかし、長期的な戦略価値は高く評価されています。

この買収は、AI時代における「垂直統合の復活」を象徴しています。20世紀初頭の石油王ジョン・D・ロックフェラーが原油採掘から精製、販売まで一貫して手がけたように、CoreWeaveはハードウェアからソフトウェア、データセンター運営まで統合しようとしています。現代のAI処理では、GPUの性能だけでなく、電力供給の安定性、冷却効率、ネットワーク遅延など、インフラ全体の最適化が競争力を左右します。自社でインフラを所有することで、これらすべての要素を統合的に管理し、顧客に最高のパフォーマンスを提供できるのです。

まとめ

CoreWeaveによるCore Scientific買収は、AI業界における垂直統合戦略の重要な事例となります。90億ドルという巨額投資により、同社は1.3ギガワットの電力容量と全国規模のデータセンターネットワークを確保し、長期的なコスト削減と運営効率の向上を実現します。暗号通貨マイニング施設のAI用途への転換は、既存インフラの有効活用という観点からも注目されます。この買収により、CoreWeaveはAI基盤競争において重要な戦略的優位性を確立し、今後の成長基盤を固めることになるでしょう。