ドイツがApple・GoogleにDeepSeek削除要請：GDPR違反で規制強化

2025年06月29日

ドイツがGDPR違反を理由にDeepSeekアプリの削除をApple・Googleに要請
中国サーバーへの個人データ転送と政府アクセスが問題視される
イタリア・韓国に続く国際的な中国AI規制強化の動き

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ドイツ当局がDeepSeekに対する削除要請を正式発表

ドイツのデータ保護委員会のマイケ・カンプ氏は、中国のAI企業DeepSeekが開発したアプリについて、AppleとGoogleに対してアプリストアからの削除を正式に要請しました[1]。この要請は、DeepSeekが欧州連合の一般データ保護規則（GDPR）に違反して、ユーザーデータを適切な保護措置なしに中国のサーバーに転送していることを理由としています。

カンプ氏の事務所は5月にDeepSeekに対してコンプライアンス遵守の期限を設けていましたが、同社はこれを無視していました[2]。ドイツ当局は、中国の国家情報法により中国企業が保有するデータに中国政府がアクセス可能であることを特に問題視しており、DeepSeekがこのリスクを軽減する措置を講じていないと指摘しています。

この事案は、デジタル主権をめぐる新たな局面を示しています。GDPRは単なる個人情報保護法ではなく、EU域外への情報流出を防ぐ「デジタル国境」の役割を果たしています。中国の国家情報法は、中国企業に対して情報収集への協力を義務付けており、これがEUの「十分性認定」を得られない根本的な理由となっています。つまり、技術的な暗号化だけでは解決できない、法制度レベルでの根本的な対立が存在するのです。

国際的な規制強化の連鎖反応

ドイツの動きは孤立したものではありません。イタリアは既にDeepSeekとの協力を拒否した後、同アプリをブロックしており、韓国も同様の措置を講じています[1]。オランダでは政府機関での使用が制限されており、各国が独自の判断で中国製AIアプリに対する規制を強化している状況です。

米国でも議員らが連邦政府での中国製AIモデルの使用を禁止する法案の起草を進めており[3]、DeepSeekが中国軍事作戦を支援しているとの報告も浮上しています。これらの動きは、AI技術をめぐる地政学的な緊張が高まっていることを示しており、技術的な優位性だけでなく、データガバナンスの観点からも国際的な分断が進んでいます。

この状況は「AI冷戦」の始まりを予感させます。従来の貿易摩擦とは異なり、AIアプリの規制は個人の日常生活に直接影響を与えます。例えば、スマートフォンユーザーが突然お気に入りのAIアシスタントを使えなくなる可能性があります。しかし、これは単なる不便さの問題ではありません。AIが社会インフラ化する中で、どの国のAI技術に依存するかは、その国の情報主権と直結する重要な選択となっているのです。企業にとっても、グローバル展開する際の法的リスク評価がより複雑になることを意味します。

Apple・Googleの対応と今後の展望

現在のところ、AppleとGoogleはドイツからの要請を検討中であり、具体的な対応は明らかになっていません[3]。両社は各国の法的要請に応じてアプリストアからアプリを削除した実績がありますが、今回のケースは技術的な問題ではなく、地政学的な要因が絡む複雑な判断を迫られています。

DeepSeekアプリは米国では依然として利用可能な状態が続いており、プラットフォーム事業者は国ごとに異なる規制要求への対応を迫られています。この状況は、グローバルなデジタルプラットフォームが直面する新たな課題を浮き彫りにしており、技術革新と規制遵守のバランスを取る必要性が高まっています。

AppleとGoogleが直面しているのは、技術的な判断を超えた政治的な選択です。一方で欧州の規制要求に応じれば、中国市場での事業に影響が出る可能性があります。逆に要請を無視すれば、欧州での法的リスクが高まります。これは「デジタル外交」とも呼べる新しい領域で、プラットフォーム企業が事実上の外交官的役割を担わされている状況です。今後、このような政治的判断を迫られるケースは増加すると予想され、企業のガバナンス体制にも新たな課題を提起しています。

まとめ

ドイツによるDeepSeek削除要請は、AI技術をめぐる国際的な規制競争の新たな段階を示しています。GDPR違反という法的根拠に基づく今回の措置は、単なる技術規制を超えて、データ主権と地政学的な対立が複雑に絡み合った問題であることを明確にしました。今後、各国がAI技術に対する規制スタンスを明確化する中で、グローバルなデジタル経済の分断がさらに進む可能性が高まっています。