キオクシア、次世代SSDでAI市場攻略へ

2025年07月01日

キオクシアが第8世代BiCS FLASHを搭載した新型SSDを発表
GPU製造企業との連携でAI向け最適化を推進
1000万IOPSを超える高性能SSDを2026年後半に投入予定

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第8世代BiCS FLASH技術による革新的SSD

キオクシアアメリカは、第8世代BiCS FLASH TLCベースの3D フラッシュメモリを搭載した初のエンタープライズSSDとなるCM9シリーズPCIe 5.0 NVMe SSDを発表しました[1]。このSSDには、CBA（CMOS directly Bonded to Array）技術という建築革新が組み込まれており、電力効率、性能、密度の向上を実現しています。

CBA技術の導入により、フラッシュデバイス当たりの利用可能容量が2倍になり、データ集約型アプリケーションのSSD全体の性能指標が改善されています[1]。この技術革新は、急速に拡大するAIワークロードの要求に対応するキオクシアの戦略的な取り組みを示しています。

CBA技術は、従来のフラッシュメモリ構造を根本的に見直した革新的なアプローチです。これは、建物の基礎と上部構造を一体化するような発想で、メモリセルとコントロール回路を直接結合することで、データの読み書き経路を大幅に短縮しています。この結果、電力消費を抑えながら処理速度を向上させることができ、特にAIの学習や推論処理のような大量のデータを高速で処理する必要がある用途において、その真価を発揮します。容量の倍増も、AIモデルの大型化に対応する上で重要な要素となっています。

AI市場への戦略的アプローチ

キオクシアは主要なGPU製造企業と密接に連携し、AI及びグラフィックス集約型アプリケーション向けにドライブを最適化する取り組みを進めています[2]。この協業により、AIワークロードの特性に合わせたストレージソリューションの開発が加速されています。

同社のSSDロードマップには、XL-FLASHシングルレベルセルメモリと再設計されたコントローラーを組み合わせた新しいSSDが含まれており、小規模データトランザクションにおいて1000万IOPSを超える性能を実現する予定です[2]。サンプルユニットは2026年後半までに提供開始される計画となっています。

GPU製造企業との連携は、AI市場における競争優位性を確立するための極めて戦略的な動きです。これは、自動車メーカーがタイヤメーカーと協力して最適な組み合わせを追求するのと似ています。GPUが「エンジン」だとすれば、SSDは「燃料供給システム」の役割を果たし、両者の最適化により全体のパフォーマンスが大幅に向上します。1000万IOPSという数値は、従来のストレージの概念を覆すレベルの性能であり、リアルタイムAI推論や大規模言語モデルの学習において、ボトルネックを解消する可能性があります。

次世代フラッシュメモリの開発戦略

キオクシアは将来のフラッシュメモリに向けて2つの開発パスを設定しています。第一は、次世代の第10世代BiCS FLASHによる容量増加、第二は、メモリアレイに直接CMOSボンディングを行うBiCS 9の最適化です[2]。これらの技術開発により、AI市場の多様なニーズに対応できる製品ラインナップの構築を目指しています。

キオクシアヨーロッパは、高性能データセンターアプリケーション向けに設計された次世代KIOXIA CD9PシリーズPCIe 5.0 NVMe SSDのプロトタイプ開発を発表しました[3]。この発表は、新興の計算需要に対応するストレージソリューション開発への同社の継続的な注力を表しています。

キオクシアの二重開発戦略は、技術進歩の不確実性に対するリスクヘッジとして非常に賢明です。これは、投資家がポートフォリオを分散するのと同様の考え方で、容量重視と性能重視という異なるアプローチを並行して進めることで、市場の変化に柔軟に対応できます。特にAI市場では、大容量を必要とする学習フェーズと、高速応答が求められる推論フェーズという異なる要求があるため、この戦略により幅広い顧客ニーズをカバーできる可能性があります。プロトタイプの開発発表は、技術的な実現可能性を示すとともに、市場への早期参入意図を明確に示しています。

まとめ

キオクシアの最新SSD技術は、急成長するAI市場における同社の競争力強化を目的とした戦略的な取り組みです。第8世代BiCS FLASH技術とCBA技術の組み合わせにより、従来比2倍の容量と優れた性能を実現し、GPU製造企業との連携によりAI特化の最適化を進めています。2026年後半に予定される1000万IOPS超の高性能SSDの投入により、AI市場でのシェア拡大が期待されます。