Rolling Stone運営Penske、GoogleのAI概要機能で初の著作権侵害訴訟

2025年09月14日

米大手出版社として初めてGoogleのAI検索機能に対する訴訟を提起
AI概要表示により関連収益が33%以上減少、トラフィック迂回が深刻化
出版業界とテック企業間のAI著作権問題が法廷闘争へ発展

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史上初の大手出版社によるGoogle AI訴訟の背景

Rolling StoneやBillboardなどの著名メディアを運営するPenske Media Corporation（PMC）が、GoogleのAI概要機能に関して連邦地方裁判所に反トラスト法違反の訴訟を提起しました[1]。この訴訟は、米国の大手出版社がGoogleのAI検索機能に対して法的措置を取った初めての事例として注目されています[3]。

PMCの主張によると、GoogleのAI概要機能は同社のジャーナリズムコンテンツを無断で利用してAI要約を生成し、元のサイトへのトラフィックを大幅に減少させているとのことです[1]。同社は月間1億2000万人のオンライン訪問者を抱える大手メディア企業であり、この問題は業界全体に波及する可能性があります[5]。

この訴訟は、AI時代における情報の価値と所有権に関する根本的な問題を提起しています。従来の検索エンジンは「道案内」の役割でしたが、AI概要機能は「目的地そのもの」を提供してしまうため、ユーザーが元のサイトを訪問する必要性が大幅に減少します。これは、レストランのメニューを見せるだけだった案内人が、実際に料理を作って提供し始めたような状況と言えるでしょう。出版社にとって、コンテンツ制作への投資回収が困難になる深刻な構造変化です。

収益への深刻な影響と具体的な被害状況

PMCの調査によると、同社サイトへのGoogle検索結果の約20%にAI概要が含まれるようになり、これが直接的な収益減少を引き起こしています[1]。特に深刻なのは、アフィリエイト収益が2024年末までに33%以上減少したことです[2]。

この問題の核心は、AI概要がユーザーの疑問に直接答えることで、元記事への訪問が不要になってしまうことです[2]。従来の検索結果では、ユーザーは詳細情報を得るために必ず元サイトをクリックする必要がありましたが、AI概要により情報が検索結果ページ内で完結してしまうのです。

この収益減少は単なる数字以上の意味を持ちます。出版社の収益モデルは、読者がサイトを訪問することで成り立つ広告収入とアフィリエイト収入に大きく依存しています。AI概要により訪問者数が減少することは、質の高いジャーナリズムを支える経済基盤そのものが揺らぐことを意味します。これは、図書館で本の要約だけを読んで満足し、実際の本を購入しなくなる読者が増えるような状況です。長期的には、優良なコンテンツ制作への投資が困難になり、情報の質の低下を招く可能性があります。

業界全体に広がるAI著作権問題の深刻化

PMCの訴訟は孤立した事例ではありません。Encyclopedia BritannicaやMerriam-WebsterもPerplexity AIに対して著作権侵害で訴訟を提起するなど、出版業界とAI企業間の法的紛争が相次いでいます[2]。People CEOのNeil Vogel氏は、GoogleをAIクローラーに関して「悪質な行為者」と批判し、出版社を不利な立場に追い込んでいると指摘しています[6]。

一方で、一部の出版社はAI企業との収益分配契約を模索する動きも見せています。Time誌のようにPerplexityとの収益分配プログラムに参加する出版社もあり、業界内でも対応が分かれています[2]。Anthropicは書籍出版社との間で15億ドルの和解金を支払うなど、AI企業側も法的リスクを回避する動きを見せています[6]。

この状況は、デジタル革命期のレコード業界とストリーミングサービスの関係に似ています。当初は対立していた両者も、最終的には新しい収益分配モデルを構築しました。しかし、AI技術の場合、コンテンツの利用方法がより複雑で、従来の著作権法では対処しきれない側面があります。出版社は「協力か対立か」の二択を迫られていますが、真の解決策は、AI技術の恩恵を享受しながらもコンテンツ制作者が適切な対価を得られる新しいエコシステムの構築にあるでしょう。この訴訟は、そうした新しいルール作りの重要な出発点となる可能性があります。