a16z出資のSlingshot AI、セラピーAI「Ash」で93億円調達

2025年07月23日

Slingshot AIが総額93億円の資金調達でセラピーAI「Ash」を正式発表
5万人のベータユーザーとの協力で開発された音声・テキスト対応チャットボット
臨床専門家による監督下で強化学習により継続的に改善される仕組み

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a16z主導で93億円調達、メンタルヘルスAI市場に本格参入

Andreessen Horowitz（a16z）が主導するSlingshot AIは、総額9300万ドル（約93億円）の資金調達を完了し、AIセラピーチャットボット「Ash」を正式にローンチしました[1]。同社にはRadical Ventures、Forerunner、Felicis、Menloなどの著名投資家も参加しており、メンタルヘルス分野におけるAI活用への期待の高さを示しています。

Ashは5万人のベータユーザーとの協力により開発され、テキストと音声の両方に対応したマルチモーダルなセラピー体験を提供します[2]。従来のチャットボットとは異なり、会話の記憶機能を持ち、ユーザーとの継続的な対話を通じて個別化されたサポートを実現しています。

この資金調達額は、メンタルヘルス分野のスタートアップとしては非常に大規模です。従来のセラピーは予約待ちや高額な費用が課題でしたが、AIによる24時間アクセス可能なサービスは、まさに「心の健康のデジタル化」と言えるでしょう。ただし、人間のセラピストが持つ共感力や直感的な理解をAIがどこまで再現できるかは、今後の大きな検証ポイントとなります。

臨床専門家との協働で安全性と有効性を確保

Ashの開発において特筆すべきは、臨床アドバイザリーボードとの密接な協力体制です[1]。従来のAIチャットボットが技術的な観点から開発されることが多い中、Slingshot AIは心理学的な基盤を重視し、人間のセラピーとは異なるアプローチを採用しています。

システムは強化学習を通じてユーザーとの対話を分析し、リアルタイムで改善を続ける仕組みを持っています[2]。また、臨床的な境界管理戦略により、危険な状況を適切に識別し、必要に応じて人間の専門家への橋渡しを行う機能も備えています。

メンタルヘルスAIの最大の課題は「安全性」です。うつ病や自殺念慮を抱えるユーザーに対して、AIが不適切な対応をした場合の影響は計り知れません。Slingshot AIが臨床専門家との協働を重視している点は、この分野への真摯な取り組みを示しています。まるで「AIセラピストに人間の監督者がついている」ような構造で、技術の可能性と人間の専門性を両立させる試みと言えるでしょう。

iOS・Android対応で即座にアクセス可能な新しいセラピー体験

Ashは現在、iOSとAndroidの両プラットフォームで利用可能となっており、従来のセラピーサービスが抱える「アクセシビリティ」の課題解決を目指しています[3]。ユーザーは予約や待機時間なしに、24時間いつでもセラピー的なサポートを受けることができます。

同社は、AIによる新しいセラピーパラダイムの創造を掲げており、従来の人間セラピストによる治療とは根本的に異なるアプローチを提案しています[1]。これにより、メンタルヘルスサービスの民主化と、より多くの人々への支援提供を実現しようとしています。

メンタルヘルスサービスの「民主化」は非常に重要な概念です。現在、多くの人が経済的理由や地理的制約でセラピーを受けられない状況にあります。Ashのようなサービスは、まるで「ポケットの中にセラピストがいる」ような体験を提供し、心の健康管理を日常的なものに変える可能性があります。ただし、重篤な精神的問題には人間の専門家による治療が不可欠であり、AIサービスは「入り口」や「補完的な役割」として位置づけることが重要でしょう。

まとめ

Slingshot AIのAsh発表は、メンタルヘルス分野におけるAI活用の新たな段階を示しています。93億円という大規模な資金調達と臨床専門家との協働体制は、この分野への本格的な取り組みを物語っています。今後、AIセラピーがどの程度人間のセラピストを補完し、メンタルヘルスサービスの課題解決に貢献できるかが注目されます。