ワーナーブラザース、Midjourney著作権侵害で提訴・画像生成AI規制が本格化

2025年09月07日

ワーナーブラザースがMidjourneyを著作権侵害で提訴、3大スタジオ目
バットマンやスーパーマンなど人気キャラクターの無断生成が争点
ハリウッドがAI企業との法廷闘争と協業を同時進行で展開

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ワーナーブラザースが第3の大手スタジオとしてMidjourneyを提訴

ワーナーブラザース・ディスカバリーは9月4日、AI画像生成プラットフォームのMidjourneyに対し、著作権侵害を理由とする訴訟をロサンゼルス連邦地方裁判所に提起しました[1]。この訴訟により、同社はディズニーとユニバーサルに続く3番目の大手映画スタジオとして、Midjourneyに対する法的措置を講じることになりました。訴状では、Midjourneyがスーパーマン、バットマン、バッグス・バニー、トムとジェリーなど、ワーナーブラザースが所有する著名キャラクターの画像や動画を無許可で生成していると主張しています[2]。

特に注目すべきは、ワーナーブラザースがMidjourneyに対し「以前は著作権侵害コンテンツの生成を防ぐガードレールが存在していたが、最近それらを意図的に除去した」と指摘している点です[3]。同社は、この変更がMidjourneyによる「計算された利益追求の決定であり、著作権所有者に対するゼロ保護を提供するもの」だと厳しく批判しています。訴訟では、法定損害賠償として作品1件につき最大15万ドル、または同社の利益の返還を求めています[4]。

この訴訟の背景には、AI技術の急速な発展と著作権保護の間で生じている根本的な対立があります。Midjourneyのような生成AIは、膨大な画像データを学習して新しい画像を作り出しますが、その学習データに著作権で保護された作品が含まれている場合、生成される画像が元の作品の特徴を再現してしまう可能性があります。これは、料理のレシピを覚えた料理人が、無意識のうちに他の料理人の独創的な技法を真似してしまうような状況に似ています。ワーナーブラザースの主張は、Midjourneyが意図的に「安全装置」を外したことで、この問題をより深刻化させたというものです。

ハリウッドの二面戦略：訴訟と協業の同時進行

興味深いことに、ハリウッドの大手スタジオは一方でAI企業を提訴しながら、他方では別のAI企業との協業も積極的に進めています[5]。この一見矛盾した戦略は、実は業界が直面している複雑な現実を反映しています。スタジオは、知的財産権を侵害するAI企業に対しては断固とした法的措置を取る一方で、適切にライセンス契約を結び、著作権を尊重するAI企業とは積極的にパートナーシップを構築しようとしています。

この戦略の背景には、AI技術が映画制作の効率性向上に大きな潜在力を持っているという認識があります。視覚効果の制作、キャラクターデザイン、さらには脚本の初期段階での支援など、AI技術は適切に活用されれば制作コストの削減と品質向上の両方を実現できる可能性があります[6]。しかし、その前提として、AI企業が既存の著作権法を遵守し、コンテンツ所有者との適切な契約関係を築くことが不可欠です。

ハリウッドのこの二面戦略は、新技術との向き合い方として非常に戦略的です。これは、自動車産業が自動運転技術に対して取っているアプローチと似ています。安全基準を満たさない技術には厳しく対処する一方で、適切な規制の下で開発される技術には積極的に投資するという姿勢です。映画業界にとってAI技術は「敵」ではなく、適切に管理された「パートナー」になり得るということを、この戦略は示しています。重要なのは、技術の発展と既存の権利保護のバランスを取ることであり、今回の訴訟はそのバランス点を模索する過程の一部と言えるでしょう。

Midjourneyの規模拡大と法的リスクの増大

Midjourneyは現在、約2100万人のユーザーを抱え、2024年9月時点で3億ドル以上の収益を上げている巨大なAI企業です[3]。この規模の拡大により、同社は著作権侵害に関する法的リスクも比例して増大させています。特に注目すべきは、同社が最近動画生成サービスにも事業を拡張していることで、これによりハリウッドスタジオとの直接的な競合関係が生まれています。

訴状によると、Midjourneyは単に著作権で保護されたキャラクターの画像を生成するだけでなく、これらのキャラクターを使って自社のサービスを積極的にマーケティングしているとされています[7]。これは、著作権侵害の「故意性」を示す重要な証拠として、法廷で大きな争点になる可能性があります。同社は以前、フェアユース（公正使用）の原則を根拠に自社の行為を正当化していましたが、商業的な利用とマーケティングへの活用は、この抗弁を困難にする可能性があります。

Midjourneyの現在の状況は、急成長するテック企業が直面する典型的なジレンマを表しています。技術革新のスピードが法的枠組みの整備を上回る中で、企業は「グレーゾーン」での事業展開を余儀なくされることがあります。しかし、企業規模が拡大し、収益が増加するにつれて、このようなリスクテイクは持続可能ではなくなります。これは、初期のUberが各国の交通規制と衝突しながらも事業を拡大し、最終的には各国政府との協調路線に転換したプロセスと似ています。Midjourneyも今後、著作権所有者との建設的な対話と適切なライセンス契約の締結に向かう可能性が高いでしょう。

まとめ

ワーナーブラザースによるMidjourney提訴は、画像生成AI業界における規制強化の象徴的な出来事です。3大スタジオが足並みを揃えて法的措置を講じることで、AI企業に対する明確なメッセージが発信されました。同時に、議会レベルでもAI企業に著作権で保護された素材の使用について明示的な許可を求める法案が検討されており、規制環境は確実に厳格化に向かっています。今後、AI企業は技術革新と知的財産権保護の両立を図る新たなビジネスモデルの構築が求められることになるでしょう。